介護報酬改定が意味するもの。
平成27年4月から介護保険制度が一部改定され、当施設のような特別養護老人ホームには原則として要介護3以上でないと入所できなくなります。同時に介護にかかる費用である介護報酬に関しては引き下げとなり、全体で2.27%、特養(ユニット型個室)については実に5.6%の引き下げが決まりました。入居判定の基準が要介護3以上になることに関しては、特養というものが本来重度の要介護高齢者のための福祉施設であることからすれば必然的な方向性と言えるでしょう。
問題は介護報酬の引き下げです。社会福祉法人には多額の内部留保があるからという理由づけがなされています。しかし、社会福祉法人の財務状況は様々で、特に歴史が浅い法人の大部分では施設建設のための多額の借入金が残っている場合が多いのです。ですから、報酬の引き下げが介護の質の低下につながる可能性を指摘する意見が出てくるのもうなずけます。
他方、現在の日本の財政赤字を考えると、社会福祉だからと言って財政負担の増額をいつまでも続けることができないというのも道理です。
このような状況のなかで私たち社会福祉法人ができることは、介護の質を高める努力をしながら、経費を削減することしかありません。言い換えれば、経営の効率を高めることがきわめて重要になってきます。従来福祉の世界では「経営効率」という観念はなく、効率的に運営すべきなどと言えばむしろ悪い響きを持って受けとめられてきました。しかし要介護の高齢者が約600万人にも達しようとし、国民のだれもが家族や親族の介護という問題に直面する時代において、「経営効率」を無視しては介護や福祉の制度がやがて破たんしてしまうでしょう。
今回の報酬改定が意味するものは、効率的な運営(経営)をしながらも介護の質を高めることが求められるようになったということを関係者は肝に銘じるべきだと痛感しています。