平成27年度、兵庫県高等学校初任者研修に講師として行ってきました。
5月7日(木)16時15分から17時までの45分「高齢者の尊厳を支える介護現場の実際」というタイトルで講義をしてほしいとの依頼で、34枚~35枚のシートを作ってパワーポイントでの説明を行おうとしました。しかしよく考えてみると、参加者は地理歴史、数学、国語、理科、保健体育、芸術、外国語、家庭、情報、農業、工業、商業、水産、福祉(2名のみ)のほとんどが介護を全く知らない教師ばかりなので、作成した34枚~35枚のシートを変更し、新たに24枚のシートに作りかえました。できるだけ幅広く介護の現在、未来を語り、今後の介護の世界に少しでも理解を深めてもらいたいとの考えです。
当日の講義の流れは、
①高齢化の進行に関する国際比較
高齢化率が21%に達したのは先進国中、日本がNo.1で、8年前に達しています。中国では23年後の2038年に到達し、アメリカは35年後の2050年に到達します。
②年齢別将来人口の推計
2015年に1億2650万人の総人口が、2050年には9700万人になり3000万人減少し、65才以上の高齢者は遂に3400万人から3800万人になり、400万人も増加します。超高齢化社会に突入します。
③高齢者人口と認知症高齢者
2015年に認知症高齢者の数は345万人で、65才人口に対して10.2%の有病率です。2025年に向けて、毎年増加していきます。
④今後の介護職員の増加
2015年から2025年まで統計上は毎年4.3万人ずつ増加して177万人から220万人に達しますが、2025年時点でまだ30万人不足する状態となります。
⑤徘徊中の事故に妻の責任
愛知県大府市で2007年(H19)12月にJR東海共和駅で85才の妻(要介護1)がまどろんでいる間に91才の夫である男性(要介護4)が、電車にはねられて死亡した事故で、名古屋高裁は2014年(H26)4月にJR東海に対して妻の監督責任を認め360万円の賠償を命じた裁判がありました。これを防ぐには、もう家庭だけでは限界があります。地域の福祉力が問われています。
⑥介護保険の総費用
2015年は10兆円、2025年には21兆円と言われている介護保険をいかに少なくするか、今後の大きな問題です。ちなみに65才以上の介護保険料は2000年の介護保険がスタートしたときが月額2913円で2015年には月額兵庫県で5576円となっています。2025年は8200円になるだろうと試算されています。
⑦今後の日本の介護の柱は「地域包括ケアシステムの構築」
Ⅰ.サービスの充実 | 1.在宅医療、介護連携の推進 |
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2.認知症施策の推進 | |
3.地域ケア会議の推進 | |
4.生活支援サービスの充実・強化 | |
Ⅱ.重点化・効率化 | 1.全国一律の予防給付(訪問・通所介護)を市町村に移行する |
2.特養の入居者は要介護3以上とする |
⑧2015年4月1日新総合事業がスタート
2018年3月までにすべての市町村に新総合事業として、訪問介護・通所介護を訪問型サービス通所型サービスとしてプラスアルファのサービスを提供します。担い手はボランティアなどの地域住民などです。2018年4月からは介護保険サービスの適用外となります。
⑨施設から在宅へ
1.在宅医療、在宅介護の推進
2.24時間対応の定期巡回サービスの普及・推進
⑩11種類の介護施設の特徴と価格
⑪要介護認定の流れ
⑫認知度
1.認知症とは
2.認知症の状態
3.認知症の種類
4.認知症と老化の違い
5.認知症になりにくい生活習慣
⑬認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の概要
7つの柱
1.認知症の理解の普及・啓発
2.医療・介護の提供
3.若年性認知症対策
4.介護者への支援
5.やさしい地域づくり
6.研究開発
7.患者と家族の視点を大切に
目的:認知症の人が認知所と共によりよく生きていく事ができる環境整備を行う。
以上の内容は、45分では語りつくせませんでした。5分ほどオーバーしてなんとか終了しましたが、ちょうど私の体調が悪く鼻水を流しつつの講義で、鼻をかんでマイクを演台に忘れて肉声で講義を続けて終われば喉がガラガラでした。将来受講者の先生方が進路指導を担当される時に、競争社会にはなじまないが心やさしい生徒にこのような世界もあるよと言っていただきたく、1時間熱弁をふるった次第です。このような機会を与えていただいた兵庫県社会福祉協議会に感謝申し上げます。